壱岐の伝統を未来へつなぐ、環境に配慮した酒造り

壱岐の伝統を未来へつなぐ、環境に配慮した酒造り

長崎県壱岐島で、伝統の本格焼酎「壱岐焼酎」を造る玄海酒造株式会社では、2022年4月、製造工程で使用するボイラーの燃料をA重油からLPガスへ転換した。

24年間使用した重油ボイラーの老朽化を契機に、作業効率や維持管理だけでなく、環境負荷や安全性、人材確保などの課題を総合的に見直し、LPガス貫流ボイラーを導入した。

導入後は、ボイラーの立ち上げ時間が従来の約15分から2〜3分へ大幅に短縮。さらに、重油漏れによる地下水汚染リスクの回避、黒煙や油汚れの解消、CO₂排出量の削減など、環境面でも大きな効果が生まれている。

伝統の酒造りを支えるエネルギーを見直す

壱岐島は麦焼酎発祥の地として知られ、玄海酒造と関連会社である有限会社山の守酒造場では、長い歴史の中で培われた伝統製法を守り続けている。

玄海酒造では、米と大麦を「米1:大麦2」の割合で仕込む伝統的な壱岐焼酎の製法を継承しながら、無農薬米やオーガニック大麦の採用、樫樽貯蔵など、新たな酒造りにも挑戦している。

仕込み(アルコール発酵)の様子「米1:大麦2」の割合で仕込む 伝統的な壱岐焼酎の製法

仕込み(アルコール発酵)の様子
「米1:大麦2」の割合で仕込む
伝統的な壱岐焼酎の製法

蒸留工程

蒸留工程

一部商品では、焼酎をホワイトオーク樽で熟成

一部商品では、焼酎をホワイトオーク樽で熟成

壱岐産「大麦」の栽培地

壱岐産「大麦」の栽培地

一方、山の守酒造場では、一次・二次仕込みのすべてを昔ながらの「和甕(わがめ)」で行う「全工程かめ仕込み」を守り、常圧蒸留100%にこだわって麦本来の味わいを引き出している。

山の守酒造場の「伝統のかめ仕込み」

山の守酒造場の「伝統のかめ仕込み」

山の守酒造場の「かめ貯蔵」

山の守酒造場の「かめ貯蔵」

こうした酒造りに欠かせないのが「蒸気」である。原料となる大麦や米を蒸す工程、蒸留、瓶の洗浄など、製造のさまざまな場面でボイラーが活躍している。

老朽化した重油ボイラーが環境面でも課題に

玄海酒造では、長年、大型の炉筒煙管ボイラーを使用していた。しかし、使用開始から24年が経過し、老朽化が進行。重油漏れや事故のリスクに加え、定期的な清掃・点検にかかる手間や費用も課題となっていた。

特に懸念されたのが、万が一の重油漏れによる地下水汚染のリスクである。

壱岐の豊かな自然に囲まれ、地下水を仕込み水として酒造りに利用する同社にとって、周辺環境を守ることは酒造りを未来へつなぐうえでも重要なテーマである。

また、工場隣接地にアパートが建設されたことで、ばい煙や黒煙による近隣への影響にも配慮が必要となった。

こうした環境面の課題に加え、従来のボイラーは蒸気を使用できる状態になるまで約15分、冬場にはさらに時間がかかることもあり、毎日の立ち上げがタイムロスとなっていた。

品質を確認したうえでLPガスへ

これらの課題を解決するため、同社が選択したのがLPガス小型貫流ボイラーである。

ただし、伝統的な酒造りにおいて、熱源の変更は製品品質にも関わる。そこで2021年11月から山の守酒造場で先行テストを実施。蒸気の質や安定性が焼酎の品質に影響しないかを慎重に確認した。

その結果、品質・製造工程ともに問題がないことを確認し、2022年4月から両蔵で本格運用を開始した。既存配管を活用することで、操業を止めることなくスムーズな燃料転換を実現した。

CO₂排出量を40%以上削減――環境に配慮した酒造りへ

今回の燃料転換は、作業効率や設備の安全性を高めるだけでなく、環境負荷の低減という点でも大きな成果をもたらした。

潜熱回収型LPガス小型貫流ボイラーの導入により、CO₂排出量は40%以上削減された。

また、重油燃焼時に発生していた黒煙や油汚れ、燃料特有の臭いも解消。ボイラー周辺を含む工場内外を清潔に保ちやすくなり、クリーンな作業環境の実現にもつながった。

さらに、重油の貯蔵・使用に伴う油漏れのリスクも低減した。特に地下水を仕込み水として使用する同社にとって、重油漏れによる地下水汚染の危険性を回避できたことは、環境保全の観点から大きなメリットとなっている。

立ち上げ時間を約15分から2〜3分へ。人手不足対策にも

環境面だけでなく、日々の製造現場にも大きな変化が生まれた。

従来はボイラーの立ち上げに約15分を要していたが、小型貫流ボイラーでは、スイッチを入れてから2〜3分程度で蒸気を供給できる状態となる。

「以前のボイラーは温まるまでに15分ほどかかっていましたが、新しいガスボイラーはスイッチを入れると2〜3分で一気に熱い蒸気が出ます。毎日の立ち上げ作業がとてもスムーズになりました」と、玄海酒造の山内社長は話す。

また、小型貫流ボイラーの台数制御により、製造現場の負荷変動に応じた安定した蒸気供給も可能となった。

さらに、小型貫流ボイラーへの更新により、従来必要だった「ボイラー取扱作業主任者」の選任が不要となった。講習を受講した作業者による運用が可能となり、専門資格を持つ人材の確保・維持にかかる負担を軽減。人手不足が課題となる中でも、柔軟な人員配置が可能な製造体制につながっている。

玄海酒造 小型貫流ボイラー×2基

玄海酒造 小型貫流ボイラー×2基

LPガスバルク貯槽(980kg×2基)

LPガスバルク貯槽(980kg×2基)

山の守酒造場 小型貫流ボイラー×1基

山の守酒造場 小型貫流ボイラー×1基

LPガスバルク貯槽(980kg×1基)

LPガスバルク貯槽(980kg×1基)

環境負荷を抑えながら、伝統を未来へ

玄海酒造の山内社長は、今回のLPガスボイラ―導入について次のように話す。

「伝統の酒造りを守っていくことはもちろん大切です。それと同時に、壱岐の自然の恵みをいただいてお酒を造っているからこそ、その自然を次の世代に残していくことも、私たちの役割だと考えています。今回のLPガスボイラーの導入も、伝統を守りながら、環境にも配慮した酒造りを続けていくための、良い取り組みの一つになりました。」

壱岐の豊かな自然の恵みを生かして造られる「壱岐焼酎」。

伝統を受け継ぐだけでなく、時代に合わせて酒造りの環境も進化させる。

LPガスへの燃料転換は、環境負荷を低減しながら伝統を未来へつなぐ、持続可能な酒造りへの新たな一歩となっている。

代表取締役社長 山内昭人氏

代表取締役社長 山内昭人氏

会社の概要

玄海酒造株式会社
長崎県壱岐市郷ノ浦町志原西触550-1
URL:https://mugishochu-iki.com/
有限会社山の守酒造場
長崎県壱岐市郷ノ浦町志原西触85番地
URL:https://mugishochu-yamanomori.com/
むぎ焼酎「壱岐」

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壱岐スーパーゴールド
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長崎壱岐「山乃守」

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