製品供給の安定化

製品供給の安定化

1954年に創業した株式会社イノアックコーポレーションは、車両のシートから化粧のパフまで生産している、私たちの生活を幅広くサポートする企業である。この度燃料転換を行った場所は、岐阜県池田町にある西濃事業所。東京ドーム一個分の広さの敷地では、「グローバル」「スピード」「クリーン」の3つをキーワードにタイヤ等ゴム製品を主力として、運営されている。

周辺環境への責任感

イノアックコーポレーション西濃事業所では1968年から、タイヤ製造の工程で、A重油、C重油を燃料に10tの水管ボイラにて、様々な製品を製造していた。

40年以上動き続けてきたボイラの老朽化は避けられず、メンテナンス費の増加や熱効率の低下が懸案材料になり、さらに燃料タンクが地下にあったことから油漏れのリスクも懸念されるようになった。工場内にて燃料転換によるボイラ更新の機運が高まる中、本社との話し合いを経て、2013年ついに燃転へ向け動き出したのである。

周辺環境への責任感

検討の日々、従業員の安全と作業の効率化を目指して

燃転が決まると、イノアックエラストマー社長廣田氏自ら情報収集に乗り出した。近隣の工場へのリサーチや、エネルギー供給会社各社に相談を繰り返す。その結果、何よりも安定供給の確保を重視し、配送システムが確立されていたLPガスを選ぶ。「工場は24時間稼働が大前提で、1時間でもストップしたらお客様への安定供給のお約束が果たせないでは済まされない。それが一番心配だった」(廣田社長)。

ローリーの配送は二日に一度で、LPガス充填に要する時間は一時間半。ガス供給会社との話し合いは2ケ月で13回にも及んだが、そのほとんどは、工場内の大型ローリーの移動スペースと、タンクからボイラまでの配管ルートの検討だった。検討を重ねた結果、ローリーの移動距離を最低限に抑えるため、大容量30tのストレージタンク一基を入口近くに配置、ボイラは三浦工業製の小型貫流ボイラSQ3000を、工場内2ケ所に2基ずつにわけて計4台設置することに決まった。

燃料転換業務担当の安田室長は「タンクとボイラをつなぐ配管ルートが何より問題だった」と当時の苦労を思い返す。その時から現在に至るまで、ガス供給会社への信頼は厚い。供給会社側も何かあればすぐ飛んでいく、と笑顔で返す関係だ。

30tタンクに充填中の大型ローリー

30tタンクに充填中の大型ローリー

2ヵ所に分かれて2基ずつ設置されたボイラ

2ヵ所に分かれて2基ずつ設置されたボイラ

今なら何も迷わない

燃転効果は大きかった。燃転前ボイラに係る労力は、三交代の常時監視、運転開始前の加温、C重油へ助燃料投入やすす発生抑制のための乳化剤投入などの作業を従事者4名で行っていた。しかしLPガスに変えてからは、業者による定期点検や、遠隔監視モニターの24時間メンテナンス体制のバックアップ、温水ボイラや気化器でLPガスを気化させていることで汚れも減少したため従事者は実質1人になった。ばい煙測定も不要となり、CO2削減にも大きく貢献できた(年▲22.6%)。

特定高圧ガス主任者講習の従業員への修得斡旋、高圧ガス第一種貯蔵所の登録などは、企業の保安意識の向上にも一役買った。また、ボイラの熱効率が想定通りアップ(86%→95%)したこともあり、ランニングコストは試算よりはるかに下回った。

燃転前は、取扱いや費用面での不安はあった。しかし杞憂に過ぎなかった。取扱いも難しくなく、メンテナンスの手間も簡単になり、何よりLPガスは煙やすすの発生が抑えられるクリーンなエネルギーだった。「今なら何も迷わないが、当時は悩みに悩んだ末の大決断だった」と廣田社長は語る。

地元貢献、愛社精神から世界へ

イノアックコーポレーションは、世界に向けてグローバル展開中の企業である。この流れの中、LPガスへの燃転は今後求められる生産効率の向上に向けた土台となった。企業として未来へ邁進する中、LPガスはまさにイノアックコーポレーションの燃料のひとつになったのである。

廣田社長の「工場はお取引様に是非とも見てもらうべき」という考えの下、5Sの中でもとりわけ整理・整頓の2Sが徹底され、お取引様の来訪が一気に増え、今工場内は非常に活気づいている。イノアックコーポレーションの製造品目のひとつ、地中を走る水道管にはめるゴム輪は、阪神大震災の時にも外れず耐震性が証明されている。廣田社長は、水を飲むときにも自社を誇りに思う、と笑顔になった。

水道管用ゴム輪を持つ廣田社長(右)と安田業務管理室長(左)

水道管用ゴム輪を持つ廣田社長(右)と
安田業務管理室長(左)

会社の概要

株式会社イノアックコーポレーション
徳島県小松島市立江町字黒岩13番地の1
愛知県名古屋市中村区名駅南2-13-4
代表取締役社長:井上 聰一

イノアックエラストマー株式会社
岐阜県揖斐郡池田町本郷680番地(西濃事業所)
代表取締役社長:廣田 英幸

創業:1954年(昭和29年)/工場設立:1961年(昭和36年)
資本金:7億2,000万円/イノアックエラストマー株式会社 資本金:9,500万円
従業員:1,741名(2014年12月31日現在)/西濃事業所:518名(2015年10月15日現在)
池田工場敷地面積:47,636平方メートル