短期的な視点においてのLPガスへの燃転計画とは

短期的な視点においてのLPガスへの燃転計画とは

燃料転換効果

CO2削減率 ▲21.2%
燃料費 ▲46.1%
メンテナンス費用 ▲80%
省エネルギー率 12.4%向上

丸本本間水産株式会社は、昭和43年創業の水産物卸売及び水産物加工製造を手掛けるメーカー。主力商品の味付けかずのこは、同社が国内で初めて開発・製品化したもので、現在でも国内最大の製造元である。創業時より同族経営を行っていたが、平成26年7月に取引先である阪和興業株式会社の子会社となった。

燃転に至るまで

阪和興業が親会社になる数年前のこと。道内の水産加工会社は、売上高の横這いが続く一方、原料費や人件費は上昇し、どこも経営が厳しい状況となっていた。いくつかの同業他社が倒産する中、丸本本間水産は当時、原材料の4分の1を仕入れていた取引先・阪和興業の子会社として経営再建の道を選択することになる。

同社は本社工場で、札幌市・北海道大学の裏手にあり、工場としてはかなり都心にあるといえる。創業時、この場所で始めた理由の一つは消費地に近いからであったのだが、物流が発達した現在は商品の9割を道外に出荷している。そのため、新体制の当初から、工場移転の計画が浮かんでいた。

売上は、繁忙期にあたる10月~12月の3か月と、閑散期の1月から9月までとは、およそ10倍以上の差がある。生産ラインも同様だ。

阪和興業から出向している野田社長が就任して半年後、繁忙期が終わったばかりの平成27年初頭、2基使用していた灯油ボイラーのうち1基が老朽化により壊れてしまう。

工場内の様子

工場内の様子

経営再建中の大出費をどうするか

幸いにして故障したのが閑散期に入ってからだったため、1台でしばらくは間に合わせることができた。しかし次の繁忙期までには修理もしくは交換は必須である。また、もう1台も同時期のボイラーであるため、こちらもいつ壊れてもおかしくない状態だった。そこで2台同時に交換することを計画するが、当初は燃転の考えはなく、同じ灯油を燃料とする灯油ボイラーでの交換に決定した。

設備投資を抑えるため、政府の補助事業に申し込むことを決めたが、その時点で地域工場・中小企業向けの補助金申請(採用方式・先着順)に間に合わず、再度方策を探ることになる。その中ボイラーメンテナンス業者から、ガス会社の燃転担当者を紹介された。

ガス会社からの提案は、エネルギー使用合理化事業者支援補助金を利用すること。この補助金用にLPガスへの燃転で計算しなおしたところ、燃料費は▲46.1%、CO2は▲21.2%が見込まれた。メンテナンス費用も約80%削減が計算された。この時、都市ガスへの燃転も検討されたが、工場移転の計画を控え、長期的な利用を想定していないため、配管まで引いても経費回収できないとの判断もあった。

申請後、更新費用の3分の1の補助金取得、また生産性向上設備投資促進税制も利用できることがわかり、平成27年5月末から約5か月をかけて工事を行った。

今回交換したボイラーは、サムソン製の0.75t蒸気ボイラー2台で、主に道具の滅菌に使われている。工場の外側、ボイラー室の真裏にあたる場所には、ハイパーバルク1t×2台が設置された。

サムソン製ボイラ

サムソン製ボイラ BOα-750N
2台が向かい合って設置されている

1tハイパーバルク2台

1tハイパーバルク2台

経費削減以上の効果

経費削減中とはいえ、衛生管理、商品の品質の維持、そして工場内の安全と勤務者の健康において、水準を落とすことはできない。しかも次の繁忙期までに、という危急の状態。時間と予算に追われる中、より良い設備の導入という難問への回答がLPガスであった。

さらなる結果として、老朽化していたボイラーを新品にしたことにより省エネルギー率も12.4%向上、ススの発生も少なくなり、親会社である阪和興業の掲げる高い環境基準も満たすことになった。

新体制の方針は、経費削減だけではない。魚の乱獲をはじめとする環境問題、コンプライアンスにも重点が置かれるようになったのだ。将来の工場移転計画も控え、大きな変化にさらされている同社にとって、突然の機器の故障は想定外のトラブルであったが、見事解決に至ったのである。LPガスについての知識も増え、将来的には災害バルク等の設置も考えているとのこと。

丸本本間水産株式会社代表 野田社長

丸本本間水産株式会社代表
野田社長

会社の概要

大場農園
佐賀県唐津市浜玉町五反田230
代表者:大場 博紀
ハウス面積:19,300平方メートル (GHP導入面積1,980平方メートル)

日刊工業新聞「ニュースイッチ」の取材による記事