重油→LPガスで燃料コスト削減

重油→LPガスで燃料コスト削減

きっかけはCO2削減、騒音対策

日本の米どころ山形に本社を置く東北ぼんち製菓株式会社(遠藤純民社長)は、「一粒主義 BONCHI‐ISM」をモットーに品質とおいしさにこだわった米菓(煎餅・あられ)を製造・販売している。昨年9月、山形工場に設置された熱源ボイラーの燃料を重油からLPガスに転換、環境・省エネ性向上と燃料コスト削減を実現した。

燃料転換のきっかけは、CO2削減と騒音対策だった。ここ5年ほど、省エネへの取り組みを積極的に進めてきたが、工場設備の導入で長年取引のある半田機械産業の半田勳宏社長から、小型ガスボイラー(サムソン社製)の提案と国のLPガス転換補助の情報を得て、早速検討を開始した。

近江鍛工製品

小型ガスボイラー
(サムソン社製SSB-2000EPPG)
最高圧力:0.98MPa
ボイラー効率:100%
使用燃料:LPガス
換算蒸発量:2,000kg/h
保有水量:160ℓ

LPガスは環境によいイメージ

以前にも焼き工程の熱源としてLPガスボイラーを使っていたことがあった。阿部孝一専務は、「当時からLPガスは煤が出なくて掃除の手間が省ける。CO2排出量も少なくて環境によいイメージを持っていた」という。JR寒河江駅から車で5分ほどの立地条件もあって工場の周囲には年々住宅が増え、24時間操業をつづけていく上で近隣住民への配慮は欠かせないものとなっていた。重油ボイラーと比べて騒音も少なく、CO2排出量も少ないLPガスへの切り替えは理にかなった選択だった。

ボイラー燃料費6.5%削減

提案のあった小型ガスボイラーは、潜熱回収型で燃焼効率が良く、ランニングコストの点でもメリットがあった。阿部専務は「導入した10月から12月までの3カ月で、約6.5%もボイラー燃料費が削減できた」と導入効果に満足している。また、重油ボイラー操業には1級技士の有資格者が必要だったが、LPガスボイラーにしたことで2級技士での対応が可能となり、人材確保の点でも負担が軽減された。敷地内に設置したLPガスバルク貯槽(15t)をフル活用して、「採算が合えば、今後他のガス機器を積極的に増やしていく」という。手始めに、包装作業場冷房用のGHP(ガス・ヒートポンプ)や、停電対応として自家発電の導入を検討している。

LPガス貯槽(15t)

LPガス貯槽(15t)

電力デマンド対策にLPガスは有効

製造工場の設備拡張の際、電力デマンド契約は悩みの種となるケースがある。ガス機器を有効に活用していくことは、電力デマンド対策、さらに東日本大震災以降、重要性を増している節電対策の上でも、より実践的な選択と言えるであろう。

震災後も供給途絶えなかったLPガス

昨年3月11日の東日本大震災の時は、サプライチェーンの寸断でボイラーの燃料となる重油の入手が困難な状況となった。阿部専務は、「重油の手当てに奔走して、大阪から専用トラックでドラム缶に入れた重油を運んだ。それで何とか工場の操業を止めずに済んだ」と当時を振り返る。一方、LPガスは復旧が早く、供給が途絶えることもなかった。「LPガスの導入を進めたのは間違っていなかった。LPガスと重油どちらでも使えるようにしておくのがいい」と痛感したという。利用できるエネルギーの選択肢を増やしておくことは、大震災の教訓の一つと言えるであろう。

環境への取り組み

東北ぼんち製菓では、これまでも独自に環境・燃料効率アップへの取り組みを進めてきた。煎餅乾燥に600℃の耐熱性を持つ遮熱材を導入した。空気の流動性がなくなったことで、煎餅の割れが減少し、省エネ+作業効率のアップにもつながった。

また、同じ寒河江市にある揚げ煎餅専用の中央工業団地工場では、油の臭気対策として植物油処理を導入、そのほかごみ加工工場の建設や工場排水の50%削減など、製造業としてさまざまな環境への取り組みを推進している。

会社の概要

東北ぼんち製菓株式会社
代表取締役社長 遠藤 純民
従業員数108名(23年6月時点)
山形工場:山形県寒河江市越井坂町100番地
敷地面積17,000m2、建物面積4,400m2、ISO9001 認証取得(平成13年11月)
長崎工場:長崎県松浦市御厨町横久保免2-1
中央工業団地工場:山形県寒河江市中央工業団地16番
敷地面積6,600m2、建物面積2,700m2、ISO9001 認証取得(平成15年12月)