地域密着企業での燃料転換

地域密着企業での燃料転換

燃料転換効果

省エネルギー率 14.6%
CO2排出削減量 37t
原油換算燃料削減量 12.4kl

※数字は全て2017年実績

今回訪問したユニオン電装株式会社は、1967年3月に岐阜県の中津川市坂下で創立された換気扇のシステム部材を中心に住宅関連機器部品の製造を手掛けている中堅企業である。当協会の関連団体である日本LPガス団体協議会の当時の「エネルギー使用合理化事業者支援補助金」を利用して燃料転換をされてたため当協会より打診をし、今回の取材が実現した次第である。同社は、換気扇システム部材などの製品に調色システムによる指定色塗装がその主たる事業であり、顧客の多様なニーズに応えられる確かな技術を保有している。また、各種機器用部品などの生産加工自体も手掛けており、板金プレス加工から溶接・塗装・組立・梱包までの一貫生産体制を持ち、多品種少量生産を得意とした顧客の短期納品という切実な要望にも迅速に応えることができ、三菱電機株式会社を始めとした大手企業を中心に様々な顧客の信頼も厚い。

地球環境問題への取り組みの視点

愛知県名古屋市から中央本線で長野方面に特急で約1時間走ると、ユニオン電装株式会社が立地する岐阜県の最東端の中津川市に辿り着く。中津川は、東は木曽山脈、南は三河高原に囲まれ、中央には木曽川の清流が流れる、江戸時代には、京と江戸を結んだ中山道の宿場町として栄え、古来より、多くの日本人が京・大阪・名古屋・江戸への往来の際に訪れた、独自の文化と豊かな自然に囲まれた歴史のある町である。このような地方都市において、同社では地元雇用にこだわり、社員を育て技術を磨きながら多くの人々を雇用し続けてきたという。そのような中、2014年、川上哲也社長が就任され、売上が20%増・雇用数も20%増と順調に業績を伸ばしてきた。さらに、環境対策・地球温暖化対策に対する機運が高まってきている中、ユニオン電装株式会社としても企業としての社会的責任を果たしていくべきとの認識の下、「CO2削減ポテンシャル診断」を受診する(※「CO2削減ポテンシャル診断」とは、国(環境省)から認定を受けた省エネ診断機関が事業所を訪問し、現在のエネルギー消費状況を元に有効な設備の導入・運用改善などについて試算、事業所における費用効果的な対策の実施を支援するというもの。環境省からの一定の助成がある。)。その診断結果の中の一つとして、灯油ボイラをLPガスボイラに更新すると光熱費の大幅な削減になると判かり、設備投資に踏み切ったのが今回の燃料転換の契機とのことである。

工場内の様子

工場内の様子

燃料費の削減効果などLPガス燃料への転換は大成功

同社では、まず、2016年8月、プレス製品についている油分などを取り除き化成被膜を加工するために利用している老朽化した灯油ボイラをLPガスボイラに更新した。ボイラの更新にあたっては約1,300万円の投資をしたが、20年間をも使用した灯油ボイラ(診断時燃焼効率88%)から最新のサムソン社製ボイラ(燃焼効率97%)を導入したこともあり、年間200万円ほどの燃料費の削減につながり、投下資本の回収も順調のとのことである。また、同社はもともとGHP用にLPガスの1tバルクタンクを有していたが、翌2017年3月、塗料の乾燥炉の燃料をブタンガスからプロパンガスへと変更し、3tバルクタンクを設置した。地盤改良を要したタンクの設置場所の選定など苦労も多かったが、プロパンガスに一本化して、ブタンボンベの交換等の危険な作業もなくなったという。実は、今回の燃料転換においては、ガス供給会社の選定に最後の最後まで悩まれたとのこと。補助金の申請と同時進行での設備更新の工事日程調整など、同じく地元企業である宮内石油店とその卸し元のヤマモトエナジー販売株式会社の迅速かつ着実な対応もあり、燃料転換は成功をおさめることとなる。

サムソン社製プロパンガスボイラ

サムソン社製プロパンガスボイラ

プロパンガス3tタンク

プロパンガス3tタンク

中津川に根差した郷土愛に溢れる魅力のある会社

ユニオン電装株式会社は、岐阜県内で4社目、東濃地域では初めての「ユースエール認定企業」であり、若者の低離職率を始め、低残業時間、高有給休暇取得率など、厳しい審査をクリアした結果、若者にとって極めて労働環境に優れた企業と認められた。中津川周辺の若者にやりがいのある仕事や職場環境を提供出来ると、東京・名古屋などの都会に若者が流出するのを食い止められ、会社としても、技術者の後継者の雇用に悩まされないで済み、かつ、地域社会にも貢献できる。実際には、若者を地域の企業に引き付けることは、全国の地方企業が一番苦労されて半ば諦めているというくらい大変に難しいこと。今回、当協会が同社を取材させて頂いたが、工場見学中、にこやかに元気に挨拶をしてくれる若手社員、黙々と集中して作業をしておられる熟練工員、そして、何より、今回、大変お忙しい中、とても温かく丁寧に取材に応じてくれた西尾真取締役のお人柄が深く心に残った。

川上哲也社長(右)と西尾真取締役(左)

川上哲也社長(右)と西尾真取締役(左)

会社の概要

ユニオン電装株式会社
岐阜県中津川市坂下212-1
代表者:川上 哲也
設立年月日:昭和42年3月
従業員数:約150名
URL:http://uniondenso.co.jp/

日刊工業新聞「ニュースイッチ」の取材による記事