最高品質を追及する一生産者として

最高品質を追及する一生産者として

燃料転換効果

CO2削減率 ▲30%
エネルギー使用量 ▲30%
経費削減率 ▲25%

佐賀県唐津市浜玉町はハウスみかん栽培の盛んな地域で、全国シェア35%、佐賀県としては40%のシェアを誇る。その中でも19,300m2のハウスを持ち、みかんの他、デコポンや厳しい選果基準をクリアした麗紅柑・はまさきを栽培しているのが大場農園の大場博紀さん。父の跡を継ぐ2代目、農業10年30歳の若い職人だ。

情報収集、勉強、挑戦の日々

父親の代、大場農園ではA重油燃料のボイラーのみでハウスみかん栽培を行っていたが、2012年所有ハウスの3分の1にEHPを導入した。EHPに切り替えると、それまで冬場、重油ボイラーで暖房だけだった温度管理が、夏の冷房での調整も可能になり、格段に質の高いハウスみかんが作れるようになった。

そこで大場さんは、残りのハウスにもEHPの導入を検討していたが、作付面積が大きい大場農園では出力増強にはキュービクル設置が不可欠となり、金銭面で導入に踏み切れずにいた。また外気温が下がった時の霜取り作業のための運転が必要になるなど、導入前の想定ほど燃料代も下がらずイニシャル・ランニング共にコスト面の悩みは解決に至らなかった。

大場さんは、農園を継ぐ前に静岡県でミカン栽培の専門の勉強をする等、もともと研究熱心な人柄。EHP導入後も東京で開催された展示会等に足を運び、情報収集を続けていたところ、2013年に「スマートコミュニティ Japan2013植物工場・スマートアグリ展」にて、GHPの存在を知ることになる。

翌年メーカーに問い合わせし、詳細な説明を受け、2015年に所有ハウスの1割にあたる1,980m2に、ヤンマー製のGHP、エグゼアを20馬力×2台、供給設備として1tバルク貯槽の導入を決意した。

ヤンマー製エグゼアYNZP560J-PB2台と、LPガス貯蔵バルク985㎏1台

ヤンマー製エグゼアYNZP560J-PB2台と、
LPガス貯蔵バルク985㎏1台

GHPで四季を作り出す

色、形、糖度、酸味、品質、ハウスみかんにとって大事な要素の大半は温度で変化する。センサーに表れる数字では、温度はEHPとGHPではあまり変わりない。「ですが肌感覚での、空気感が違うんですよ」と大場さんは語る。0.5℃で温度を調整し、夏場はあえて甘さ控えめの糖度12度を目指しているとのこと。

実際の四季をずらして再現するハウス栽培であるが、EHPでは送風管の長さに25mという限界があり、ハウスの上部と下部で温度差が生じてしまう。結果として木の上部でオレンジに染まっても、下部ではまだ青いなど、色のコントロールが難しかった。対してGHPは送風管が200mまで伸ばせる上、送風ロスも少なかった。ハウス全体の均一な温度管理が可能となり、収穫も一度で済ませられる。みかんにとって理想の秋を作り出すことができるようになったのである。

室内機YZFVP560Mと、ハウス内に敷設された送風管に空気が送り込まれたところ

室内機YZFVP560Mと、ハウス内に敷設された送風管に空気が送り込まれたところ

省エネ実現と安心感

燃転効果は大きかった。まず当初の目標であった経費削減が、導入面積部分のみの比較で▲25%。エネルギー使用量が▲30%になり年間CO2排出量も▲30%。GHP導入の際に、LPガスを燃料とする炭酸ガス発生機も導入し、みかんの成熟に寄与している。これらの機器はすべて、LPガスのバルクから供給ラインをひいた。近隣に輸入基地があり、バルク配送に適した立地だったことも功を奏した。

ヤンマー製のGHPには24時間遠隔監視システムが付いており、大阪のセンターで随時データ分析している。平成28年熊本地震では、浜玉地区でもこれまで経験のない揺れを感じた。地震の時、大場さんは外出中であったが、慌ててハウスに駆け付けた。同時に、設備機器の被害状況等の確認の為担当者が駆けつけてきた。結果として被害はなく、問題なく稼働したのだが、「これは本当に嬉しかったです」と、感謝と安心感は今も継続している。

室外機裏に取り付けられた遠隔監視機

室外機裏に取り付けられた遠隔監視機

更なる品質の向上を求めて

設定さえすればオートで動くGHPであるが、大場さんはIoTを利用し、温度、湿度、照度、CO2のデータを記録している。

「みかんは農作物としては非常に鈍いんです。他の作物がモーターボートとすると、みかんはタンカー。舵を切ってから、反応が出てくるのがとても遅い。新しい調整が、良い結果として出てくるまで待たされる。悪いときは手遅れになることも少なくない。そこが面白いんです」と、笑顔で語る大場さんは、若くとも職人の目だ。

現在は、今GHP導入している2倍のハウスにGHPの導入(30馬力×4台)を予定しており、同エリアの生産者の方々にも情報を発信していく考えだ。無論EHPとの比較栽培も継続中である。父親の代から引き継がれた長年の知恵と、若い情熱、ハウスみかんへの愛情を武器に、職人が感じる「空気感」をGHPで作り上げていく。

大場農園代表 大場博紀さん

大場農園代表 大場博紀さん

会社の概要

大場農園
佐賀県唐津市浜玉町五反田230
代表者:大場 博紀
ハウス面積:19,300平方メートル (GHP導入面積1,980平方メートル)

日刊工業新聞「ニュースイッチ」の取材による記事