1864年に創業した八鹿酒造株式会社は、豊かな自然に恵まれた大分の地で主に日本酒・焼酎の製造・販売を行っている。清酒「八鹿」や焼酎「銀座のすずめ」などは酒通なら誰しも見聞きしたことのある代表作で、日本ではほぼすべての都道府県で飲むことができる。またJUSE-HACCPを取得し従業員一体となって食品・製品の安全性を保持、さらに高める努力を続けている。
きっかけは、設置40年超の地下重油タンク
日本酒製造では米の蒸し、焼酎においては蒸留の過程でボイラを利用しているが、既存重油ボイラ(炉筒煙管式ボイラ3tx1基、1.5tx1基)稼働継続に関していくつか考慮すべき点があった。設置後40年を超える地下重油タンクの存続是非と、燃料代の高騰、また熱効率の悪さ(80%)などで、いずれも対策を講じる必要があった。特に地下タンクについては交換可否判断期限が迫っていた。
さらに、6代目当主で社長の麻生氏のCO2削減の意識が高いため、クリーンなエネルギーの採用を模索していた。
バルク貯槽2基設置へ
検討の結果、LPガスバルク貯槽2.9tx2基、ボイラは三浦工業製のSQ-2000を3基(2t/基)設置することになった。バルク貯槽をこの大きさ、数にした理由は資格者の確保が容易ということなどが挙げられる。設置場所にあたっては保安距離や駐車スペース、侵入経路を確保する必要があったが、契約ガス会社のアドバイスによりスムーズに進められた。
補助金の交付もLPガスへの転換決定に大きく寄与した。この補助金については実は一度落選して意気消沈したものの、設置の意思は変わらず稼働に向けて奔走していたところ、繰り上がりで申請受付けの知らせを受け取ったという後日談がある。「ダメと思っていたため喜びも2倍になった」と武石部長。
小型貫流ボイラ(三浦工業製SQ2000)×4基
相当蒸発量2000kg/h
最高圧力0.98MPa(10kgf/cm2)
LPガスバルク貯槽(2.9t×2基)
数多くのメリット
LPガスボイラに変更してから、さまざまな変化があった。箇条書きに示すと以下のようになる。
(1)ススが出ないため掃除の手間が激減。空気もきれい
(2)A重油と比較して価格が安定している
(3)稼働するまでの時間が激減(始業前準備時間1.5hがなくなった)
(4)ボイラのメンテナンスの負担が減少
(5)人件費等ランニングコストの削減
(6)CO2削減
資格取得についても、以前はボイラー技士免許が必要だったが小型貫流ボイラになってからは不要になった。
メンテナンスにかかる労力としては、以前は心臓部であるボイラの不具合は老朽化のせいもあり頻繁に起きたので外出もままならなかったが、設置から1年たった現在は極めて順調。また、ボイラに使う水を軟水処理する必要があるが、メンテナンスといえばその軟水装置への2日に1度の塩の投入くらい、という。
エネルギー消費量が大幅に削減され(原油換算で30%程度減)、懸案であったCO2についても180t/年の削減を達成できた。
太鼓判のLPガス
2011年秋頃から検討し始めた今回のLPガスへの燃料転換。2012年9月の稼働開始に照準を合わせ、あわただしく準備を進めてきた。補助金の交付もあったため、このままでいくと5~6年で投資回収できる見通し。武石部長は言う。「CO2の削減に取り組め、コストも下がる。こんなにメリットが多かったなら、もっと早くからLPガスにしておけばよかった。自信を持ってお勧めできますね」
工場のオートメーション化もいち早く導入し、日本だけでなく世界進出も果たしている八鹿酒造。製造工程見学会や利き酒会など盛んな地域貢献活動を通じて、これからもますますファンを増やしていくことだろう。
武石 信明 部長
会社の概要
八鹿酒造株式会社
大分県玖珠郡九重町大字右田3364番地
ホームページアドレス
http://www.yatsushika.com/
代表取締役社長 麻生 益直
工場敷地 15,100平方メートル
創業 元治元年(1864年)
資本金 7,410万円
従業員 約120名